CQ27-2 血液凝固異常患者における鼠径ヘルニア修復術後の血腫予防法はあるか?
Answer
現時点で本邦における明らかな予防法はない(推奨グレードC1)。
CQ27-3 肝硬変患者への鼠径ヘルニア修復術は安全に施行できるか?
Answer
手術関連死・合併症を増加させるという報告があるが、非肝硬変患者との手術成績に差がな
いとの報告もあり、慎重な適応が必要である(推奨グレードC1)。
解説
非肝手術においても手術関連死、合併症を増加させるとのシステマティックレビューが
あるが、膵・心血管手術においてそのリスクは最大であるのに対し、胆嚢摘出術、臍ヘルニ
ア修復術、鼠径ヘルニア修復術では最低であった。非肝硬変患者手術と比較し再発率、合併
症率に有意差なし。また、腹水を有するChild B,Cの患者においても重篤な合併症はなく、
再発、手術関連死はない との報告もある。有症状鼠径ヘルニア患者では、Lichtenstein法
でSF-36上QOLを改善させたとの報告がある。
*肝硬変患者の鼠径ヘルニア修復術に関しては鼠径部切開法による術式を選択したい。肝
硬変の病期にもよるが、ひとたび腹腔内に感染を併発すると生命に危険が及ぶ可能性があ
る(元々の専門は肝臓でした)。腹腔鏡手術が感染しやすいと言うわけではありませんが(逆
に抗生物質が不要な感染しにくい手術ですが)、肝硬変=易感染症状態と考えてのことです。
前方到達法で出来る限り腹膜に負担をかけない術式をするべきであると考えます。