治療前診断は身体所見のみで良いか?

CQ3治療前診断は身体所見のみで良いか?

Answer

典型的な膨隆を伴うものには身体所見のみでよい。疑わしいもの、非定型的なもの、治療においてより正確な診断を必要とする場合などでは他の診断方法を加える(推奨グレードC1)。

CQ3-1身体所見以外の診断方法は何か?

Answer

身体所見の不明確な場合や症状から疑わしい例には超音波、CT、MRI、ヘルニオグラフィーなどから侵襲度などを考慮して行う(推奨グレードC1)

グレードC1=行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠はない

解説

鼠径ヘルニアの診断は身体所見のみで診断される場合が多く、診断率は70~90%とされる。

超音波診断は最も非侵襲的で存在診断に有用である。

CT、MRI検査は脂肪腫や大腿ヘルニアの診断あるいはその併存の診断が可能である。しかし内・外鼠径ヘルニアの鑑別には限定的である。

 *とありますが、最近の単純CTでは下腹壁動静脈の同定も可能であり、脱出内容やpantaloon型、大腿ヘルニアなども描出可能であり、個人的には術前実施したい検査です

CQ4鼠径部ヘルニアと鑑別が必要な疾患は?

Answer

鼠径部膨隆、腫脹に関しての鑑別を要する疾患は

1)鼠径部リンパ節腫脹           2)動脈瘤

3)静脈瘤(精索静脈瘤、円靭帯静脈瘤)   4)軟部腫瘍

5)膿瘍                  6)精系奇形(異所性清掃など)

7)子宮内膜症               8)Nuck菅水腫、精索水腫

典型的な膨隆を伴わない疼痛や不快感について

1)恥骨結合炎               2)子宮内膜症

3)内転筋付着部炎

(推奨グレードC1)

解説

鼠径部ヘルニア野膨隆は経過、触診における軟性、体位による変化やグル音野聴取などの特徴を有し、身体所見のみでの診断率はい70~90%とされる。

*子宮内膜症・Nuck菅水腫の存在に注意をする

  Nuck菅水腫に内膜症を合併いている場合、破裂などした場合は腹痛やイレウスの原因にもなるので、その取扱には十分注意する必要がある

CQ5鼠径部ヘルニアはどの分類を用いるべきか?

Answer

日本ヘルニア学会鼠径部ヘルニア分類2009年改訂版を用いることが推奨される(推奨グレードC1)。

 agree

CQ6 成人鼠径部ヘルニア発生の危険因子と予防方法には何があるか?

Answer

高齢、るいそう、経後恥骨的前立腺摘出術の既往などがヘルニア発生の危険因子である。明確な予防法はない(エビデンスレベルⅢ)

CQ6-1 成人鼠径部ヘルニア発生の危険因子には何があるか?

Answer

高齢、るいそう、反対側のヘルニアの既往、ヘルニアの家族歴、腹圧のかかる仕事や運動、

経後恥骨的前立腺摘出術の既往、慢性的な咳、腹膜透析、喫煙、プロテアーゼインヒビターの服用、腹部大動脈瘤などが危険因子として報告されている(エビデンスレベルⅢ)

解説

  • 年齢、性別などの一般因子

小児ヘルニアを除けば、鼠径ヘルニアは高齢男性、大腿ヘルニアは高齢女性に多いことは臨床的に明らかである。鼠径ヘルニアと大腿ヘルニアを比較すると大腿ヘルニアの方が高齢者に多い。肥満は腹圧上昇の一員となるので危険因子と考えられることが多いが、大規模な前向き検討でむしろBMIの高い方がリスクは低いと報告されている。一側のヘルニア治療後の対側発症率は、報告によってかなりの相違があるが、大規模な検討で10年で3.8%に発症すると報告されている。疫学的検討では、慢性的な咳、便秘、ヘルニアの家族歴などが危険因子として挙げられている。

  • 既往疾患

経後恥骨的前立腺摘出術後は鼠径ヘルニアの発生が明らかに多い。その他の下腹部正中切開手術が危険因子となるとする報告もある。

  • 組織代謝的因子(鼠径管後壁のコラーゲン減少に関与する因子)

EHSガイドラインでは喫煙が明らかな危険因子とされているが、その後、反対の結果の論文も出ている。直接の因子ではないが、腹部大動脈瘤もコラーゲン減少が関与するためヘルニアを併存することが多いと報告されている。

  • その他の原因

 特殊な成人鼠径ヘルニアの原因として、サッカー、アイスホッケー、ラグビーなどの激しい運動がいわゆるスポーツヘルニアの原因となることもある。

CQ6-2 成人鼠径部ヘルニアを予防する方法はあるか?

Answer

確実な予防法はないが、適度な運動と喫煙が発生率低下に有用とされている(推奨グレードC1)

解説

ヘルニアの原因は多岐にわたっており、明確な予防法はない。過剰ではない運動と禁煙が発生率低下に有用とされており、EHSガイドラインで「唯一有用と考えられる予防法は禁煙である」とされているが、喫煙の影響については異論もある。前立腺手術後のヘルニアを防止するには、アプローチの工夫や、精索根部の処置などさまざまな術式によるリスク軽減が最近多数報告されているが、現時点で標準とされた方式は確立されていない。

*本邦では年間に約14万例の手術が実施されています。潜在的には年間30~40万例の発生が言われているようです。外科手術の中でとても頻度の高い疾患ではありますが、普段の生活の中で鼠径部ヘルニア(椎間板ヘルニアならまだしも)の予防を実施しているひとがいるでしょうか?

 →予防法より「鼠径ヘルニア」「脱腸」といった疾患の概念を普及し、その診断を確実にした上で「嵌頓による緊急手術」を回避した適切な治療を受けられるようにすることこそが我々鼠径部ヘルニアの専門家が実践すべき医療と考えます。

 「この腫れはもしかして鼠径ヘルニア?」

 「鼠径部に不快感や痛みを感じる」

 「立った時やお腹に力を入れた時、鼠径部に柔らかい腫れを感じる」

 「腫れは指で押さえると引っ込む」

 といった症状の方は是非ヘルニアの専門家にご相談ください。

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