Nuck管

Keywords:女性 鼠径部ヘルニア 大腿ヘルニア Nuck管水腫 子宮内膜症
本日は女性の鼠径部ヘルニアを考えてみます
まずはM先生のビッグデータ
4063例の内女性は752例で17.5%
間接型が84%で大腿が11%(直接は2%)との内訳
平均年齢は49才と男性より10才若い
またヘルニア嚢にNuck管嚢腫を合併することが有り、その際には性周期に一致した痛みや硬結の症状が有り、術前の問診が非常に重要である
Nuck管を109例(14.5%)に認め、若年者では更にその頻度は高くなる
女性の鼠径部ヘルニアについてはその再発率が高いことがわかっていて、その再発形式も大腿ヘルニアが40%程度占めている
再発なのか、初回の見落しなのかはわからないが、女性に対する初回鼠径部ヘルニア手術では必ずヘルニア嚢から大腿輪を診査すべきである とされる
鼠径部ヘルニアガイドライン 診療ガイドライン2015 より抜粋
CQ26妊娠中を含む成人女性鼠径部ヘルニアに対して推奨される治療は?
- 女性鼠径ヘルニアでは、大腿ヘルニアの確認および予防の観点から腹腔鏡下ヘルニア修復術を含む腹膜前修復法が望ましい(推奨グレードC1)
CQ26-1女性鼠径部ヘルニアの手術適応は?
- 女性の鼠径部ヘルニアでは男性と比べ緊急手術、腸管切除の割合が高く、確定診断がつけば原則手術を検討することが望ましい(推奨グレードC1)
CQ26-2女性鼠径部ヘルニアに対する術式は?
- 女性鼠径ヘルニアでは、大腿ヘルニアの確認及び予防の観点から腹腔鏡下ヘルニア修復術を含む腹膜前修復法が望ましい(推奨グレードC1)
術前診断が大腿ヘルニアのみであれば大腿法を検討しても良い(推奨グレードC1)
ちなみに 推奨グレードC1とは
行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠はない ということです
残念ながらどれも十分な科学的根拠に至っていないのですね
ここからは『総合外科医』の私見
女性の鼠径部ヘルニアであれば、私は自分の得意な術式としてTAPP:腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を間違いなく選択します
M先生が仰られていた言葉がとても印象的で『わたしはこの方法が得意なので腹腔鏡手術はしません』 →まさにその通りだと思います
→手術を見学させて洗いがとうございました
→今後も研修のため、再訪問支度思っております
ヘルニアの手術をする外科医は必ずDr.Mのコレクションで勉強するべきです
腹腔鏡手術をする外科医も必ずDr.Mのコレクションで勉強するべきです
既存の術式を知ることは、今後新たな術式の開発に必ず必要と思います
ALOHA library のオススメ図書(写真添付:Lichtenstein & Nyhus)
ただし、Nuck管嚢腫で若い女性の場合(外性子宮内膜症などが疑われる)は、腹腔鏡手術では嚢腫の完全摘出が困難なこともありHybrid法や鼠径部切開法がよいと思われます
残念な動画をYoutubeで発見しました
海外の症例でNuck管水腫が術中の操作で破裂していました
もちろん患者背景などはわかりませんが、細心の注意が必要だと思います
→ただし 貴重な動画も発見しました
直接型のNuck管水腫を丁寧な手技でexcisionされておりました
間接型で大きな水腫の摘出は困難→ だから一般的には通常の術式でも腹膜環状切開をするわけですよね
もし子宮内膜症のある嚢腫が腹腔内で破裂した場合、播種された細胞が今後イレウスなどの原因になることを『総合外科医』は知っています